美術館・博物館での展示用の照明を決めるのために考えて行く要素はいくつもあります。
特にLEDが一般的になって以降、その光の演色性が大きな要素と捉えられているかと思います。
確かに演色性は重要な要素ではありますが、演色性の高い光源を選べば全て問題なしというわけではありません。
どこからどう当てるか。
照明器具と照らす対象の位置関係が演色性の違いを超えてその見え方に大きな影響を与えます。
立体物であれば、照明を当てる方向によってその印象が異なってくることは容易に想像つくと思いますが、平面的な絵画作品であってもやはり当てる方向が大事になってきます。
絹本の肉筆画をサンプルにして、光を当てる方向とその時の色の違いについて検証してみたことがあります。
実験の道具立ての概略は下図の通りです。
作品に対して照明器具の確度を変化させながら、色度も測定出来る輝度カメラで作品を撮影し、各点での色度を比較しました。ちなみに作品上の水平面照度は同じになる様に光量を調整しました。
その結果は下図の通りです。
作品に対して、光の当て方が浅くなるほど(なめるようになるほど)各所の色の濃度が薄くなってくる傾向がありました。
照らされる対象の表面状況によってこの傾向に違いは出てくるとと思いますが、光を当てる角度と見え方の間には変化が生ずることが判ります。
美術館・博物館の様に照らされる対象の見え方が重要となる場面での照明を決めるに当たっては、
どこから当てるか?
との課題については念入りに検証を重ね決めていく必要があります。
美術館・博物館の展示照明は、実際に収まるまでは何かと手間がかかりますが、その手間を掛けるだけの価値ある分野かなと思います。
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