楽しい美術鑑賞のお供に『いちばんやさしい美術鑑賞』

楽しい美術鑑賞のお供に『いちばんやさしい美術鑑賞』

今回は美術鑑賞の楽しみを拡げてくれる本、『いちばんやさしい美術鑑賞』(ちくま新書)を紹介します。

とにかく美術館に行きたくなる

『いちばんやさしい美術鑑賞』 (ちくま新書)は絵画や工芸品など美術品を鑑賞する際に、ただ見るだけで終わってしまうのではなく、もう一歩踏み込んで味わってみたいと思っている方には最適な指南役です。

著者は「青い日記帳」という美術ブログを15年に渡って運営されているアートブロガーのTak(タケ)さんです。美術館の公式サイトをはじめとする多くのメディアにコラムを寄稿されたり、トークショーを行ったりされています。

この本の中では、とても多くの展覧会に足を運び、鑑賞し、文章を書き続けて来られたTakさんの「作品を生で見ることの醍醐味」に対する思いが伝わってくるようです。

加えて、作品だけでなく、展示会や美術館そのものを楽しむことや、そのような楽しみを徐々に増やすためのヒントがふんだんに散りばめられていて、読むとそのヒントを拾いに美術館に足を運びたくなる本です。

紹介されている作品も多種多様

美術と一口に言っても、年代もジャンルもさまざまです。

西洋美術については、学校の美術の時間や世界史で馴染みがあっても、日本美術や現代アートは楽しみ方がよくわからない…という方でも安心!な内容で、大きくは西洋美術と日本美術に分かれていて、その中でも作品の味わい方を知るために厳選された15作品がメインで登場します。しかも、紹介される作品は国内で見られる作品ばかりという親切さです。

多くのページが割かれている日本美術については、一筆に込めた描写や光によって表情を変える色使いなど、自分の鑑賞体験と重ねて読み、そして読書体験と重ねて作品を味わえるようになっているかと思います。

そこでの作品を見るときの動き方から作品の読み解き方まで、楽しみ方の提案がされているので、旅行の時にしか美術館に行かないような方でも、割と好きな方でも、使える本だと思います。私にとっても、とても参考になりました!特に好きな部分はここです。

「ともかく好む好まざるにかかわらず、作品はたくさん観たモン勝ち!嫌いなら、嫌いでもよくて、嫌いなもの、苦手なものは「嫌い」「苦手」としっかりインプットしておけばいいのです。」

「その時好みでなかったとしても実際に目にしておくことで、何年かたって、別の視野で苦手な作家の作品が観ることができるようになり、新しく評価できる時が必ず来ます。」

いちばんやさしい美術鑑賞、青い日記帳、筑摩書房、2018、256ページ

p.99,100より

「どんな鑑賞体験も無駄にはならないから、とにかく見たらいい」と背中を押されているようです。

実際に作品をみたときのスケール感やインパクト、「美しさ」では言い表せないような気持ちなど、美術鑑賞を通じて感じることは、「きれい」に収まりません。その奥深さや楽しさを、やさしい言葉でヒントとして与えてくれるこの本は、鑑賞の楽しみを自分の中に発見させてくれます。

美術館・博物館を訪れるとき、それぞれの場所や作品に楽しみがあります。たとえば私は、ルーブル美術館にはじめて行った時の圧倒感は忘れらせません。そこで出会った西洋絵画はもちろんですが、古代エジプト美術や古代オリエントのスケール!教科書でしか見たことのなかったハムラビ法典の美しさは、格別なものがありました。なぜそれに惹かれたのかは未だに謎ですが、いろいろな鑑賞経験や勉強を積み重ねるうちに謎が解ける日が来るかもしれません。)

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今もしくはこれから行われる関連の展覧会も

もちろん紹介されいてる作品は日本にあるものですが、紹介されている作家や作品の関連する展覧会も日本で行われているもしくは行われる予定があります。

モネ それからの100年 @横浜美術館

https://monet2018yokohama.jp/exhibition/

現在~2018年9月24日

フェルメール展 @上野の森美術館、大阪市美術館

2018年10月5日 (金) ~ 2019年2月3日 (日)
会場:上野の森美術館
日時指定入場制

2019年2月16日〜5月12日
会場:大阪市立美術館

https://www.vermeer.jp/

大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋(はそうあい)」(仮称) @MIHO MUSEUM

2019年3月21日 – 2019年5月19日

http://www.miho.or.jp/exhibition/%E5%A4%A7%E5%BE%B3%E5%AF%BA%E9%BE%8D%E5%85%89%E9%99%A2%E3%80%80%E5%9B%BD%E5%AE%9D%E6%9B%9C%E5%A4%89%E5%A4%A9%E7%9B%AE%E3%81%A8%E7%A0%B4%E8%8D%89%E9%9E%8B%EF%BC%88%E3%81%AF%E3%81%9D%E3%81%86%E3%81%82/

 

いろいろと書いてしまいましたが(使えるとか言ってすみません)、とにかく著者の方の美術鑑賞に対する愛情の濃やかさがこんな親切な本になっているのだと感じました。

美術、ちょっとでも興味ある方はぜひ、お手に取ってみてはいかがでしょうか。

Amazonへのリンク

筑摩書房さんの特設ページ

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