単に高機能の照明器具を付けただけでは良い展示は生まれません。他に付随する要素との共同作業で良い展示環境ができます。展示物が持っている意味や特徴、価値を鑑賞者に十分に伝えるために有効な6つの要素をご紹介します。

1.照射方向

光をどの方向から当てるかは展示照明の出来に大きな影響を与える要素です。照射方向により影の出方や色が変化し、展示物の印象が変わります。特に照明の仕方で印象が変化しやすいのは立体物ですが、絵画などの平面作品でも、影響があります。

スポットライトを遠くから当てた場合
スポットライトを近くから当てた場合
スポットライトに地明かりを足した場合

2. 発光面のサイズ

照明器具の発光面の大きさも見え方に大きな影響を与えます。例えば、光が拡散するよう地明かりを照らすのと、スポットライトで照らすのでは違いがあります。発光面が大きいと、柔らかく光が展示物に回るので、よりフラットな印象になります。

3. 配光

光源からどの方向(角度)にどれぐらいの強さで光を発しているかを配光と言います。一般的には光の広がる角度(配光角)に注目されますが、光の広がりの中で、その光の分布がどのようなものであるかという点も鑑賞の上では重要です。スポットライトでも機種が異なると配光が異なります。また、スポットライトからの光漏れで輪郭が出てしまう場合もあります。鑑賞の邪魔になるため、選定の際に確認する必要があります。

4. 分光分布

分光分布とは、光のパワーを波長ごとに区切ってその分布を見たグラフで、光の色温度や演色評価数などもこのグラフが元となって算出されます。演色性とは、自然光に近いある色温度の電球からでた光で基準の色票をみた時のその色票からの反射光を基準として、試験する光で同じ様な反射光がどのように異なるかの比を見た指標です。基準光で見た状態を Ri100 とし、色のずれが大きくなると Ri 値は低くなります。展示照明では平均演色評価数(Ra) と R9 ~ R15 の特殊演色評価数のそれぞれが Ri90 以上であることが望ましいです。しかし、どれほど演色性が高い光源を使っても、光の当て方や配光が不適切であればきれいに見せることはできません。あくまで展示照明の要素の一つです。

5. 展示環境の中での照明設置位置

鑑賞者が展示室に入り、作品を鑑賞するまでの間は、視野の中に鑑賞の妨げになるものはないに越したことはありません。照明の光源が直接目に入らないことはもちろん、照明器具はできるだけ目立たないことが大事です。その上で、作品に適切な光を当てることが必要なので、照明器具と作品、鑑賞者の位置関係と照明効果を考慮してケース、内装のデザインを構築していかなければなりません。そのためには、美術館、照明設計、照明器具メーカー、建築設計等の関係者間での連携が必要です。

6. 環境照度

展示空間全体の明るさは重要な要素です。展示品表面の照度は保存の観点から低い照度が求められます。限られた光量で上手に見せるためには、作品と同じ視野に入る環境の照度も考慮が必要です。人の目は目に入ってくる明るさに合わせて、その受光感度を調節します。室内が明るすぎないこと、周りに際立って明るい箇所がないこと、そして漏れ光やガラスの映り込みなどに注意して照明を配置していくことで、見やすい空間を作ります。

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