北斎の橋 すみだの橋 @すみだ北斎美術館

北斎の橋 すみだの橋 @すみだ北斎美術館

先日参加いたしましたすみだ北斎美術館の『北斎の橋 すみだの橋』展のブロガーイベントに参加いたしました。今回のイベントは、青い日記帳のTakさんと企画担当の学芸員の竹村さんのギャラリートークでした。展覧会は、墨田区の方や時代劇・時代小説がお好きな方に特におすすめです!

展示風景より 第一章 北斎の橋

『北斎の橋 すみだの橋』展

すみだ北斎美術館は『地域へ、世界へと北斎に関する情報を発信し、成長し続ける美術館』をコンセプトに、2016年11月にオープンした葛飾北斎に因んだ美術館です。葛飾北斎のコレクターのピーター・モース氏や浮世絵研究者の楢崎宗重氏のコレクションの取得し、多くの浮世絵だけでなく、肉筆画や版本なども所蔵しています。企画展の展示室は4階と3階に分かれており、4階からのスタートです。

今回の『北斎の橋 すみだの橋』展では、第一章で北斎の『諸国名橋奇覧』を中心とした北斎と弟子の橋に関する作品を展示し、第二章では墨田区の橋の江戸からの変遷に関する錦絵や絵はがき、図面などの展示が行われています。10月10日にがらりと展示替えをしたばかりとのことですが、浮世絵はたいへん光に弱いため、これ以上の劣化を防ぐために1年間に1か月しか展示を行わないそうです。そのため、展示室内の照度も50lxに抑えられています。

第一章 北斎の橋

第一章の中心となる諸国名橋奇覧は富嶽三十六景と同時期に製作された北斎の代表作です。

「諸国名橋奇覧は全国の有名な橋や物語などで伝わっている橋を描いた全11枚のシリーズで、橋の構造に注目して描き分けています。」(竹村さん)

展示風景より 葛飾北斎 <諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし> 1834年頃

「まず最初の作品、『足利行道山くものかけはし』は足利 浄因寺の茶室にかかる橋を描いたもので、跳ね橋構造です。現在では橋自体は変わってしまい構造も違いますが、橋はあります」(竹村さん)

「色がとても緑が鮮やかできれいですね」(Takさん)

「かなり刷りが早いものなので、北斎の意図が反映されていると考えられます。初刷りの200枚は絵師が監督します。200枚は一日に刷られる数量です。それ以降は色が変えられてしまったり、版木が抜かされたりするので絵師の意図と離れてしまうため、初刷りが大事と言われています」(竹村さん)

「初刷りに近いものとそうでないものを比べてみる展示会があっても面白そうですね」(Takさん)

展示風景より 葛飾北斎 <諸国名橋奇覧 ゑちぜんふくゐの橋> 1834年頃 半分が木造で、もう半分が石造の特殊な構造の九十九橋

「『ゑちぜんふくゐの橋』は当時から奇橋として有名でした。ただ、北斎が越前に行った記録がないため、資料を基に描いたと思われます。他の『摂州阿治川口天保山』などの作品も資料を基に描いたと思われるものがあります。本当にいろいろな構造の橋をいろいろな構図でこのシリーズでは描いています。渡っている人の荷物は版元の紋だったり、寿の文字も版元に由来します。おそらく、版元の意図で北斎が描いたものの可能性が高いです。」(竹村さん)

展示風景より 葛飾北斎 <諸国名橋奇覧 すほうの国きんたいはし> 1834年頃

「刷りの話に関連して、『すほうの国きんたいはし』は雨を描いたものです。展示しているものは刷りの早いものなので、雨がちゃんと見えますが、後摺では雨がなくなっている版もあります。この作品は2作所蔵しているので、前期と後期で入れ替えています」(竹村さん)

展示風景より 左:葛飾北斎 <諸国名橋一覧> 右:葛飾北斎 <百橋一覧>のパネル

「当時、浮世絵に著作権のような概念はなく、絵師に版元が画料を支払い、買い取って販売していました。『百橋一覧』は北斎が夢で見た橋を描いたもので、特定の橋を描いたものではありません。しかし、後摺りでは版元が変わってしまい、文章をなくして、題名も変えてしまい、勝手に全国の有名な特定の橋の名前を入れてしまいました」(竹村さん)

展示風景より 左:葛飾北斎 <琉球八景 臨海湖声> 右:葛飾北斎 <富嶽三十六景 江戸日本橋>

「構図が面白いものといえば『富嶽三十六景 江戸日本橋』です。絵の中には橋は描かれていないように見えます。北斎は擬宝珠(ぎぼし)しか描いていませんが、実は下部に描かれている人々は橋の上を歩いています。擬宝珠は江戸では日本橋、京橋、新橋の3つと江戸城のお堀に架かる橋しか付けることができませんでした。擬宝珠がある橋というのは、格が高い橋ということになります」(竹村さん)

「では、当時の人が見ればすぐ日本橋とわかるということ。だからこそ、あえて擬宝珠だけ北斎は描いたんですね」(Takさん)

第一章では北斎の錦絵以外にも北斎漫画や本に描かれた橋、弟子の描いた橋なども展示されています。

第二章 すみだの橋

3階の展示室で第二章のスタートです。第二章では両国橋をはじめ、墨田区のいろいろな橋についての展示されています。

展示風景より 葛飾北斎 <『絵本隅田川 両岸一覧』中 両国納涼 一の橋弁天 無縁の日中> 年代未詳 2つの本を並べて展示している

「『絵本隅田川 両岸一覧』はページをめくるとつながって墨田川が描かれています。今回展示している両国橋のページでは、当時、江戸で一番栄えた場所なので、群衆が行き交っている様子が描かれています。両国橋の展示が多いですが、描き手によってさまざまな表現があります。吉良邸が近いので、赤穂浪士が描かれたものや、渡り初めの様子を描いたものもあります。橋の長寿を願って3代の夫婦が選ばれました」(竹村さん)

展示風景より 第二章では錦絵だけでなく図面や写真、絵はがきなどさまざまな資料も展示されている

「これ以降の展示も橋が熱狂的に好きなわけではないけれども、現代へ向かって橋のさまざまな資料が展示されていて面白いです。」(Takさん)

展示風景より 葛飾北斎 <『諸職絵本 新鄙形』無杭橋>

「ぜひ見てもらいたいのはこの展示会の企画のきっかけにもなった『諸職絵本 新鄙形』無杭橋のページ、三之橋の絵です。堅川という小さい川にかかっていた橋脚のない特殊な構造の橋です。北斎が描いた頃には既にこの形ではなく詳しくは古老に聞いてくれと書いています」(竹村さん)

両国橋や吾妻橋などのメジャーな橋だけでなく、三之橋などの堅川や横十間川などの橋も取り上げられており、生活に根付いた橋の昔の姿や当時の設計図なども展示されています。墨田区の方はご近所の橋のルーツが知れて楽しめるのではないかと。また、両国に観光される方も、実際の橋と見比べるとより楽しめると思います。そして、江戸時代好きな方には時代劇や時代小説でおなじみの橋も出てきます。11月4日までですのでぜひ。

展示詳細

会期:2018年9月11日(火)~11月4日(日)
開館時間:9:30-17:30(入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
主催:墨田区・すみだ北斎美術館
http://hokusai-museum.jp/modules/Exhibition/

※今回はブロガーイベントということで特別な許可をいただいて撮影しております。通常は撮影はできません。

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