道楽

幕末の北方探検家 松浦武四郎展 @静嘉堂文庫美術館

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回は静嘉堂文庫美術館で2018年9月24日(日)より行われている幕末の北方探検家 松浦武四郎展のブロガー内覧会のレポートです。
今回のイベントではトークショーも行われ、静嘉堂文庫美術館 館長の河野元昭氏と今回の企画展を担当された静嘉堂文庫 主任司書の成澤麻子氏、青い日記帳のTakさんのお話を伺うことができました。

展示風景より 唯一残されている武四郎の写真で彼が身に付けている大首飾り。さまざまな年代の石やガラス玉でできていて、絹の糸で結ばれている

松浦武四郎 ドラマ化

まず成澤さんから最新の情報についてお話がありました。
「今度松浦武四郎を題材にドラマ化され、松潤が主役になりました。深田恭子さんが相手役で来年の4月にNHKで放映されるとのことです。どんなドラマになるかはわかりませんが、松潤だと思うと松潤に見えてくるのでぜひ重ねてみてください」
皆さん手元の武四郎の写真を見て思いを巡らせていました。

展示風景より 武四郎の写真と大首飾り、そして大首飾りの解説

幕末の北方探検家 松浦武四郎とは

そして、松浦武四郎について成澤氏より詳しく解説いただきました。

今年は松浦武四郎が北海道と命名した150年記念で、それまでは蝦夷地と呼ばれていました。元々は北加伊道と書いたという字は、加伊=人々というアイヌ語で、北海道は「北のアイヌの人びとが住む大地」という意味となります。なぜ松浦武四郎が明治政府に命名の命令を受けるまでに至ったのかというと、幕末6回も蝦夷地に渡り、調査して内地までの詳細な地図を作成した功績があります。北海道の人には松浦武四郎はとても身近な存在です。

今回の展示の見どころは、展示も2つのパートに分かれている通り、武四郎の幕末の北方探検家、旅の巨人という一面と古物のコレクターという一面の二つの面から見た武四郎です。
武四郎は、71歳で亡くなるもののその前年にも富士山に登頂し身長147cmながら1日で70kmも歩いたという健脚で、北海道を自分の足で隈なく歩いて探検しました。幕府に提出する報告書のほかに、一般向けに絵や図を交えてわかりやすく書いた紀行文も製作、出版しました。それを見て一般の人は初めて蝦夷地を知ります。

展示風景より 武四郎の出版した紀行文。武四郎自身もとても絵がうまかったが、こちらは絵師に依頼しより親しみやすく制作されている(あざらしがかわいい) 。元となったスケッチは松坂市の松浦武四郎記念館に収蔵されている。

また、間宮林蔵などの地図は海岸線沿いの地図は細かに作成しましたが、武四郎は内陸部まで調査し、たいへん緻密な地図を作成しました。厳しい大地でなぜそれができたのか。それは、武四郎がアイヌ語を話し、アイヌの人たちと調査したからです。土地の人と寝食を共にしつつ調査したため、見事な地図が完成しました。今回の展示では、ほぼ原寸大で床の上にタイルとして展示しています。

展示風景より タイルに印刷されたほぼ原寸大の地図。近づくと大変細かい地形と文字の書き込みがある

北方探検家として最高の仕事を成し遂げた武四郎は大久保利通に認められ、開拓のトップの地位に就きます。そして、北海道の名付け親になるのです。武四郎は幕末期の松前藩のアイヌの人たちに対する暴虐を告発する本を出すなど、アイヌの人たち寄りの活動から、その本が発禁になったり、松前藩から命を狙われたりしました。明治政府となり方針が変わるかと思いきや変わらず、明治政府はアイヌの同化政策を進める中、武四郎はたった一年で開拓判官のトップの座を辞してしまいます。そして、コレクターの道へ進み、一切蝦夷地に触れない人生を歩みました。

展示風景より 考古学的なものから仏像、文房具など多岐にわたってコレクションし、それぞれをきちんと箱に収め、また、それを収める箱も製作し、図に書いて解説した

コレクターとしての武四郎は『馬角斎』という号を使いました。松浦武四郎記念館学芸員の山本氏によると、明治政府のやり方は自分ではどうしようもない、アイヌの人たちを置き去りにした政府のやり方とそれを止められない自分に対して『馬角斎(ばかくさい)』という号を使ったのではないかということです。
しかし、武四郎のコレクションは膨大なものとなりました。通常、コレクションは自分の好きな分野の優品を集めますが、武四郎のコレクションはあらゆる分野のものを集め、目録を作成し、分類して、整理して、保存していることが特徴です。静嘉堂では900点ほどコレクションしていますが、それは武四郎のコレクションのほんの数パーセントに過ぎません。また、武四郎は明治政府の人間とも交流があったため、武四郎の考え方みたいなものが明治の博物館構想に何らかの影響を与えたのではないかとも考えられます。例えば武四郎はものすごい数の古銭を当時の大蔵省に寄贈しています。先見性と他のコレクターとは一線を画す独特の価値観が彼のコレクションから感じられます。

展示風景より 武四郎涅槃図(河鍋暁斎作)の複製 生前に製作されたが、完成に5年もかかったという

また、武四郎の涅槃図は、生前に書かせたという珍しいものです。横たわる武四郎の周りには彼の蒐集した古物が描かれていて、今回は涅槃図のレプリカと並べられた古物が実際に観られます。

展示風景より コレクションの中には古代エジプトの埋葬で使われるシャブティなども

なぜ武四郎は北方探検家となったのか

武四郎の生まれは伊勢、現在の松坂市出身で、16歳のときに書置きを残して、一人江戸に旅立ち、見つかったところを連れ戻されます。しかし、17歳に本格的に全国を廻る旅出て、10年間放浪します。旅の資金は、行く先々で篆刻の技術を活かして印を作ったり、日雇い的に泊まった家を手伝ったりなどして稼いでいたそうです。長崎で住職をしていた際に、ロシアが蝦夷地に入っているという話を聞き、日本の危機を感じ、自分の目で見たいと行動を開始しました。松前藩の取り締まりが厳しく蝦夷地に入れず、翌年は商人の手代に身を変えて入り、そして翌年は医者の下男として入りました。今では想像のつかないほど、取り締まり、警備がとても厳しかったようで、武四郎より前に蝦夷地に入り地図を作製した間宮林蔵も正式な役人だったが変装の達人とも知られ、変装して入った模様です。

館長の河野氏も、その行動力と好奇心にものすごいと感じたと言い、さらにもう一つ武四郎の特徴を挙げました。
「武四郎の思想性がどこから来たのかというのがとても不思議です。松前藩の抑圧政策に対して、アイヌの人たちと同じような目線で立ち向かおうとした。いまでは平等などの思想があるが、当時は不平等が当たり前でした。にもかかわらず、当時なぜ彼がこういう視点を持てたのか。その思想性、ヒューマニズムを独自に編み出したとしか思えない驚嘆すべき思想性です」

展示風景より 翡翠の首飾り 99.数パーセントという大変純度の高い翡翠。大変貴重なものとのこと

今後のイベント まさかの松坂牛

会期中の今後のイベントもいろいろと企画されています。
武四郎の生まれの伊勢、現在の松坂市出身に関連してTakさんも大変驚かれていましたが静嘉堂文庫美術館で松坂牛試食会が開催されます。松坂の方からの申し出だそうです。

※松阪牛試食会は11月10日(土) 11:00~ 先着100名 試食券(500円)は、当日受付にて販売(1名様につき1枚限定)

10月14日(日)に開催される館長 河野氏のトークショーは今回ロビーを彩る茶碗の作者、川喜田半泥子についてです。川喜田半泥子は百五銀行の頭取も務めるバリバリのビジネスマンでありながら、陶芸家として、当時は東の魯山人、西の半泥子と呼ばれていました。岩崎家、そして今回の展示の松浦武四郎とつながりがあります。
川喜田半泥子の祖父 川喜田石水と武四郎は私塾の同門、今でいうと小学校の友達みたいなもので、親交は晩年まで続きました。また、第四代の岩崎小弥太と半泥子はビジネス界でのつながりから、日本の敗戦直前、小弥太が部下を連れ、川喜田家からは半泥子出て三重でお茶会を行ったと、積水美術館に残されている日記には宮氏宅にてお茶会との記載があるそうです。
岩崎家と松浦家のそれ以前の関係は、武四郎コレクションをどうやって手に入れたのかというところが興味を集めるところです。松浦武四郎も相当なコレクターでコレクター仲間も多くいましたが、その中の一人に柏木貨一郎がいます。柏木は、江戸から続く大工頭で源氏物語絵巻も所有していたコレクターでした。弥之助の深川の別邸(現在の清澄公園)の棟梁をしていたため、彼が弥之助と武四郎のコレクションの接点になっていたのではないかと推察され、弥之助が柏木嘉一郎を通じて松浦家から、武四郎のコレクションを購入したのではないかと考えるのが妥当とのことですが、残念ながら記録は残っていません。

展示風景より 川喜田半泥子 片身替茶碗 銘「寝物語」 半泥子の作品は銘も特徴的

生誕200年記念を迎える松浦武四郎展、三重や北海道でも展覧会が開催されるなど、盛り上がりを見せています。

松浦武四郎展概要

会期 2018年9月24日(月・祝)〜2018年12月9日(日)
会場 静嘉堂文庫美術館 [MAP]
住所 東京都世田谷区岡本2-23-1
時間 10:00〜16:30(最終入場時間 16:00)
休館日 月曜日
10月9日(火)
※ただし9月24日、10月8日は開館
観覧料 一般 1,000円
大高生 700円(20名以上団体割引)
中学生以下 無料
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL http://www.seikado.or.jp/

関連記事

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*