照明

美術館・博物館の空間照明(1) スポットライト・カッターピンスポットライト

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美術館・博物館向けの照明器具の構造と特徴を種類ごとにご紹介していきます。
今回は、空間照明用のスポットライト、カッターピンスポットライトについてです。

照明器具の構成

まずは一般的な照明器具の構成についてご紹介します。
照明器具は主に4つのパートから構成されています。

照明器具の構成

  • 照らすための光を生み出すLEDなどの光源
  • 光源を光らせるための電源
  • 発生した光を制御するレンズや反射鏡(ミラー)などの光学部品
  • これらを所定の位置に配置するための機構部品

スポットライト

スポットライトは、光源、電源、光学部品が一体となっていて、電気を供給するライティングダクトに取り付けることで、器具の着脱や取付位置の変更が容易にできる構造となっています。展示用のスポットライトを選ぶまたは作るうえでのポイントは以下の3点です。

LEDスポットライト

配光の正確さ

展示照明のスポットライトには意図した演出を行うために、配光の正確さが求められます。
スポットライトの光を評価する指標として、1/2ビーム角は中心に比べて明るさが半分になる角度を指します。

ビーム角

1/2ビーム角は中心からその角度を開いたところが中心の半分の明るさになり、1/10ビーム角は中心からその角度を開いたところが中心の1/10の明るさになります。
照明業界では一般的に1/2ビーム角が用いられますが、展示照明においては意図した配光で照らすために1/10ビーム角も重要な指標となります。
照度の分布も重要な指標です。スポットライトの照射面において、照度の変化のスムーズさが求められます。具体的には、照射面の中央から周辺に行くに従い、照度が一定の度合いで落ちていくのが望ましいです。
また、光学部品の端面などで意図しない反射光が発生し、照度のムラを起こすこともあります。このような光を出さないために、設計製作上、配慮する必要があります。

配光のバリエーション

展示用照明のスポットライトは、展示物に合わせてフレキシブルに配光を選ぶ必要があります。そのため、適用範囲が広くビームの開き角が狭いものから広いものまでいくつかの種類を用意しておくと便利です。また、レンズやミラーなどの光学部品の交換や追加を行うことで配光を変えられるタイプのものも多いため、展示物に合わせてカスタマイズして活用することもできます。

操作性と堅牢性

展示用照明では、光の照射方向と照度にとても微妙な調整が求められます。
照射方向のパン(左右に振ること)とチルト(上下に振ること)の位置調整と調光操作については、調整のスムーズさと設定時の位置を保持する頑丈さが求められます。照射方向を調整した後に、位置を強固に維持するためのロックができる照明器具もあります。
照度を調整する調光操作については、理想的には光束0%~100%の範囲で調整できるものが望ましいです。そのうえで低照度域での調光範囲が十分な階調を持ち、微妙な調光もできることが望まれます。

LEDスポットライトの多灯型と単灯型

現在市場にあるLEDスポットライトの光源と光学部品の組み合わせは大きく分けて多灯型と単灯型の2種類です。

多灯型

1つ当たりの光束量が150~200lm程のLEDとそれぞれのLEDに対応させたレンズもしくは反射鏡を複数個用いる構造です。一般的にはポリメタクリル酸メチル樹脂(略称PMMA)といわれるアクリルガラス製の樹脂レンズを用いる構造が主流です。

多灯型のLEDスポットライトの構造

長所

  • LEDの発光部分が小さく狭い範囲をピンポイントで照らす狭角配光が得やすい
  • 基板内に複数のLEDがあることから、熱源が分散していて、発熱する機器を冷却するためのヒートシンクという放熱部品の効率が上げやすい
  • LED及びレンズが多く市販されている
  • LEDの数を増やすことにより、大出力の照明器具を開発できる

短所

  • 展示用照明としては不適切なマルチシャドウ(照明対象の影が多重になる現象)が発生する
  • 光学部品がレンズの場合、レンズ表面での器具グレアが発生する。特に広角配光の照明では、レンズ表面の表面の粗さ(面粗度)を上げたり、複数枚のレンズを使用し、蝿の目のように縦横マトリクス状に配列したフライアイレンズを用いたりすることで広角配光を実現しており、そこでの拡散発行が器具グレアとなる場合が多い
  • LEDを実装するために専用のプリント基板が必要

単灯型

LEDモジュール1つ当たりの光束がおおよそ500lm以上となるようなCOBタイプ(多数のLEDチップを基板に直接実装した構造)のLEDに、反射鏡を組み合わせたものが一般的です。一部では大型のアクリルガラス(PMMA)製樹脂レンズとの組み合わせもあります。

単灯型LEDスポットライトの構造

長所

  • マルチシャドウの発生がないため展示用照明として適切
  • 反射鏡の場合、器具グレアを小さくすることができる
  • アルミ反射鏡の場合、比較的低コストで金型の製作が可能で、配光のバリエーションが得やすい
  • 少ないロットでもカスタム品を製造できるLEDメーカーがあり、多灯型で用いるようなLEDと比べて、アプリケーションに合わせ込んだ光源が得やすい
  • 多くのCOB部品はセラミック基板上に給電用のハンダ接続端子があるため、プリント基板の製作が不要

短所

  • COB向けとして市販されているレンズやミラーは比較的少なく、光学系から設計をして製作しなければならない場合が多い
  • LED発光部の大きさと、反射鏡等光学系部品の大きさとの相互関係により、狭角配光の光が作りにくい

COBタイプのLED

以前は多灯型が多くありましたが、マルチシャドウが出ない単灯型を利用した方が展示用照明の観点からはきれいな光になります。マルチシャドウについてはこちらのスポットライトでの気遣い点という記事でも取り上げていますので、ご参考にしてください。

 

カッターピンスポットライト

カッターピンスポットライトは展示室内のサインや展示品脇のキャプションなど、照射面を矩形に切り取るような照明を行う際に用いられる照明器具です。
スポットライトにカッター部分を取り付けて使用します。
任意の形状に調整したカッターで作られた開口の形を照射面に投影します。

カッターの仕組み

カッターで作られる開口形状が、光軸中心部から周辺部までと広いので、色収差(カッターの側面の影の部分で色がつく現象)と歪曲収差(カッターの端面が直線の場合、照射面では直線で区切られますが、この直線が湾曲する現象)を考慮した光学設計が重要となります。
また、照射面内での照度の均斉度も重要です。こちらは主にLEDからの光をカッター面に集める、集光光学系の特性に依存します。

カッターピンスポットライトの構造

スポットライト、カッターピンスポットライトについては以上です。

次回のテーマは空間照明のウォールウォッシャーについてです。

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