照明

美術館・博物館の空間照明(2) ウォールウォッシャー

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美術館・博物館向けの照明器具の構造と特徴を種類ごとにご紹介していきます。
今回は、空間照明用のウォールウォッシャーについてです。

ウォールウォッシャー

ウォールウォッシャーというと何となく壁を洗う洗浄器具をイメージしてしまいそうになりますが、照明器具の一種で、光で壁を洗浄すること、つまり洗浄するように滑らかな壁面を作り出すために、均一で照度で壁面を照らすことを意味します。

展示用照明に用いるウォールウォッシャーの役割は、主に絵画が展示される壁面の上部から下部まで、任意の照度分布を実現することです。
多くのウォールウォッシャーではLED素子を直線状に並べ、そこからの光の照射方向と範囲を反射板やレンズ等を用いて制御しています。

直線状に並んだLED

LED素子が複数個あるため、①照射面から光源までの距離が十分に取れない場合、②高出力のLEDを用いてLEDの間隔が広い場合にマルチシャドウが発生してしまうことがあります。このマルチシャドウを避けるために、光の経路(光路)上に裏側のものが透けて見える白いアクリル板(乳半)等の拡散板、デフューザーを組み込むのが一般的です。ただし、組込箇所が不適切な場合には、照明器具付近の壁面や天井面の照度を必要以上に上げてしまうことがあるため、注意が必要です。

理想的な照度分布

ウォールウォッシャーの理想的な照度分布の例は以下の通りです。

壁面を平行な方向から見た場合の鉛直面照度分布

上部ほど相対的に照度を低くしている理由は2つあります。
理由1.照明器具-照射面-鑑賞者の位置関係により、鑑賞者から見て上部ほど、輝度が高くなってしまうためあらかじめ照度を落としておく必要があります。
理由2.鑑賞物の上部に相対的に輝度の高い箇所があると、人の目の本来の観察対象物に対する明るさや色に対する感応度が低下します。観察対象物周辺の照度が十分であっても、暗く見えてしまいます。

照度分布の違いによる明るさの感じ方の例

建築用のウォールウォッシャーの場合は、天井側での照度が増してもそれほど弊害はありませんが、展示照明の場合はそうもいきません。ウォールウォッシャーでの照明対象の壁面に絵画を展示するような場合、展示物そのものへの照明だけでなく、上部から下部までの照度分布を作ることが重要です。

展示照明では、照明器具から離れるほど、照度を上げていくような設計が望まれることが多いため、配光の指向性と拡散度合いに対して積極的な光学的制御が必要となります。

空間照明のウォールウォッシャーついては以上です。

次回のテーマはケース内照明(1) 壁付けケース用ウォールウォッシャについてです。

[参考文献]

関英雄監修.LED照明のアプリケーションと技術-光学設計・評価・光学部品-.シーエムシー出版,2012,255p

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