道楽

カール・ラーション展 @損保ジャパン日本興和美術館

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念「カール・ラーション展 スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」のプレス内覧会に参加して参りましたのでその様子をレポートします。美術館に特別に写真撮影の許可を頂いて撮影しています。

今回のプレス内覧会では、担当学芸員の中島氏をはじめ、カール・ラーション・ゴーデン(記念館)館長 キア・ジョンソン氏、本展の監修者・荒屋鋪透氏(中部大学教授)、カール・ラーション家族会でカールとカリーンの子Britaのひ孫のオスカル・ヌードストローム・スカンズ氏、カール・ラーション《アザレアの花》を所蔵するティールスカ・ギャラリーの館長パトリック・ステーン氏のそれぞれから、展示品に関するお話を伺えました。

展示風景より カール・ラーションのアトリエ写真

スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家 カール・ラーション

まずは冒頭、担当学芸員の中島氏よりカール・ラーション展の概要とカール・ラーションについての解説がありました。
「カール・ラーション展は以前1994年に大きな回顧展がありましたが、今回スウェーデンと日本の外交150周年記念ということで24年ぶりに再度の回顧展として開催されます。
カール・ラーションは1853年の黒船来航の年に生まれ、1919年つまり大正6年に亡くなったことになります。明治時代を迎え、近代化する中での社会の格差の拡大などのひずみに対して、日本人としてどう生きればよいのかというのを再考しはじめたのが大正時代。日本同様、スウェーデンもヨーロッパの中では少し遅れて近代化を迎え、急速な近代化による暮らしの変化、都市部のブルジョアと農村出身の労働者の格差が広がりました。カール・ラーション自身も首都ストックホルムの貧しい地区で育ちました。画家としては、スウェーデン国立美術館やオペラ座、王立劇場などの大型の壁画を手掛け、近代化していくストックホルムの新しい建造物に多くの大きな絵画を制作しました。
そのような大作を制作する一方で、妻、家族との理想の家を作り、その様子を描いた水彩画を画集にして出版し、世界中で人気を得ました。彼らの家『リッラ・ヒュットネース』は近代化の中でスウェーデンの人々の暮らしの理想とされました。今回の展覧会ではそんなカール・ラーションの家族の世界とライフスタイルがテーマとなっています。」

展示風景より リッラ・ヒュットネースの客間

構成としては、第Ⅰ部はカール・ラーションの画業について、絵画、挿絵の仕事、版画~家族の肖像、ラーションとジャポニスムというテーマに分けて絵画や本が展示され、第Ⅱ部のラーション家の暮らしとリッラ・ヒュットネースでは、理想とされる家の中心となった妻カーリンのインテリアや服を紹介しています。

スウェーデンの最も有名なアーティスト カール・ラーション

続いて、ティールスカ・ギャラリーの館長パトリック・ステーン氏よりカール・ラーションの画家としての歴史とについての解説がありました。

展示風景より カール・ラーションの画集

「カール・ラーションがスウェーデンのもっとも有名なアーティストとなった理由は2つあります。一つは作品を複製し画集として出版したこと、そしてもう一つは妻カーリンとアーティストとして細部にまでこだわった家を創造したことです。家のいたるところの家族や友人、隣人との生活すべてが彼にとっての作品のテーマになりました。
そして、彼らの家はインテリア・デザインへの影響を強く持ちました。現在でも注目されている北欧、スウェーデンのインテリアにカール・ラーションの影響を見ることができます。」

展示風景より イケアの家具で作られたカール・ラーションの世界 展示の最後のこちらのスポットでは写真撮影も可能です。

「カール・ラーションは画家として国立美術館やアカデミーへの批判を持つ革新派として国外、パリへ発ち、戸外制作や写実主義などの影響を受けました。最初の展示はアカデミー時代やパリ時代の小さい作品です。作品『おやすみなさい』『夕べの灯りのまわりで』の二つは夜の光をテーマにしており、前者では誰かが灯りを持って寝るところのキアロスクーロ(明暗)を木炭で表現しています。後者は夜の食卓を水彩で表現していますが家族それぞれの表情が細かく描かれています。」

展示風景より 左『おやすみなさい』 右『夕べの灯りのまわりで』

「『カーリンの命名日のお祝い』では自分と同じ名前の聖人(守護聖人)の祝日で、ラーション家では命名日や誕生日をそれぞれ祝っていました。アールヌーヴォースタイルの登場人物とカーリンのインテリアの曲線が見どころです」

展示風景より 左『カーリンの命名日のお祝い』 右『白樺の樹の下で』

そして、ラーション家家族会のオスカル・ヌードストローム・スカンズ氏からもこの絵についての解説がありました。
「この絵は色遣いや家族そのものといった様子が非常に典型的なカール・ラーションの絵です。肖像画ではなく家族、子供たちの自然な姿を描いたことがとても当時としては革新的でした。青いベットにいるのが曾祖母のブリタですが、絵のためにベットを整えていたら、その必要はない、いつも通りでいいとカールに言われたそうです。そのような描き方が幸せな生活を表し、人々に受け入れられたのだと思います」

スウェーデンの社会の変化の中で

「カール・ラーションの『自画像』は自宅で画家の制服ともいえるスモックを着た姿で描かれています。ここが家であり、職場であることを示しています。歴史的にも意味があり、従来のスウェーデンでは家は小さな社会とみなされていましたが、社会こそ大きな家で構成する人たちのや自然な態度や創造性を受け入れるべきという思想の変化がこの時代に節目となりました。」

展示風景より 左『自画像』、中央『大きな帽子のカーリン』

カール・ラーション・ゴーデン(記念館)館長 キア・ジョンソン氏は『大きな帽子のカーリン』について、
「カーリンは大きな帽子をよく被っていて、常に手芸や手仕事を行ってきました」
とコメントしました。そのカーリンの仕事については第二部で詳しく紹介されます。

パリで受けた影響

展示風景より 『アザレアの花』と荒屋鋪透氏(中部大学教授)

監修者・荒屋鋪透氏(中部大学教授)はラーションとジャポニスムについて、『アザレアの花』を中心として解説しました。
「カール・ラーションは『日本は芸術家としての私の故郷』という言葉を残しています。カール・ラーションがパリにいたとき、フランスでジャポニスムブームの真っ盛りでした。ジークフリート・ビングが芸術の日本という雑誌を出したり、ルイ・ゴンスが自らの浮世絵コレクションを紹介したりしました。また、少し後にはパリ国立美術学校で大浮世絵回顧展が開催されました。『アザレアの花』は日本美術からの影響がとても大きい作品です。カーリンの手前に大きく描かれた花という構図は西洋の遠近法や構図方にはありません。日本の絵画には手前に大きく植物を出してその存在、デティールを楽しむというユーモアがあり、『アザレアの花』ではそれが取り入れられています。そして、カール・ラーションは元々イラストレーターから出発している画家であるため、線描表現に長けています。ストーリのある浮世絵の連作では線描の強弱が重要な意味を持つと知っていました。ストックホルムの国立美術館の壁画のスウェーデンの歴史を表した連作でも線描を用いています。
また、カール・ラーションがパリにいたときはミュシャなどのポスター芸術も盛んでした。そのようなアールヌーヴォー曲線的な表現とジャポニスムの特殊な構図や線描表現がカール・ラーションに大きく影響を与えました。今回の展示のほかの作品にもみられる特徴なので、ぜひ見つけていただきたい」
今回の展示はカール・ラーションが所蔵していた歌川国貞の浮世絵2点も展示されています。

カーリンが作り上げた世界

第2部のラーション家の暮らしでは、カール・ラーション・ゴーデン(記念館)館長 キア・ジョンソン氏と中島氏がカーリンの絵やラーション家のインテリアについて解説しました。

展示風景より カーリンの作品と赤いドレス カーリンの作品が日本で展示されるのは初めてだそうです。 ドレスはカーリンがデザインしたものですが、当時の女性はコルセットを装用し、きっちりとしたシルエットの服を着用していたことから、カーリンの独特のセンスと革新性が伺えます。

展示風景より カーリンのベットカバー、テーブルクロスなどの複製 右から4番目のテーブルクロスは家紋風の模様が刺しゅうされています。左下は落款のようにも見えます。

展示風景より カーリンの作品の布は傷みやすく、ケース展示されているものが実物です。複製もカール・ラーション・ゴーデン(記念館)で丁寧に作成されているそうです。奥のひまわりのクッションはキア・ジョンソン氏が複製を作成したものだそう。

北欧インテリアのルーツの一つとしても楽しめるカール・ラーション展、近代社会と個人、家族というテーマを内包しているようにも感じられます。

カール・ラーション展詳細

会期 2018年9月22日(土)~12月24日(月・休)
休館日 月曜日(ただし9月24日、10月1日、8日、12月24日は開館)
会場 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
〒160-8338 新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階

Web https://www.sjnk-museum.org/
開館時間 午前10時-午後6時(ただし10月3日(水)、26日(金)、12月18日(火)~23日(日)は午後7時まで)
※入館は閉館30分前まで
観覧料 ( )内は20名以上の団体料金および前売料金
一 般:1,300円(1,100円)
大学・高校生:900円(700円)※学生証をご提示ください
65歳以上:1,100円 ※年齢のわかる物をご提示ください
中学生以下:無料 ※生徒手帳をご提示ください

※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人とその付添人1名は無料。被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。
※10月1日(月)はお客様感謝デー(無料観覧日)

スウェーデンのカールとカーリンが暮らした家は見学できます。詳しくはCarl Larsson-gårdenのサイトをご覧ください。

関連記事

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*