納得の『全員巨匠!』フィリップス・コレクション展

納得の『全員巨匠!』フィリップス・コレクション展

今回は三菱一号館美術館で開催中のフィリップス・コレクション展のブロガーイベントに参加いたしましたので、その様子をお伝えします。アングル、コロー、ドラクロワ、クールベ、マネ、ドガ、モネ、セザンヌ、ゴーガン、クレー、ピカソ、ブラックらの作品が並ぶ、全員巨匠のキャッチフレーズに納得の展覧会です。

フィリップス・コレクションは1918年に開館したアメリカで最初の近代美術館で、アメリカの美術館として初めて、ボナールの絵画を購入し、アメリカで最初にボナールの展覧会を開催し、アメリカ最大のボナールのコレクションを築きました。

そして「作品を年代順や地域ごとの展示から解き放ち、美的な気質に従ってまとめる」という展示方法を構想しました。

展示風景より 『犬を抱く女』,ピエール・ボナール,1922年(1925年収蔵)

ダンカン・フィリップス的であることとは

今回は、「青い日記帳」主宰のTakさんをナビゲーターに、三菱一号館美術館 学芸グループ副グループ長 安井裕雄さんのお話を伺えました。

「展示するときにピカソならピカソ、マネならマネで固まって展示されているのが常ですが、今回の展示が異なっているところは、全く異なる順序で展示されているところです(takさん)」

やはり「フィリップス・コレクション展」である事を特徴づけるために、今回の展示は相当苦労されたそうです。

「三菱一号館美術館は2010年のマネ展の前にフィリップス・コレクションと交流を持ち、何度か企画展の企画がありましたが、ようやく展示会に漕ぎつけられました。貸出に見合う内容内容かというところを吟味して3度目半の正直でした。
フィリップス・コレクションでフィリップス氏が亡くなった後、妻で画家のマージョリー・アッカ―が館長を務めているときから40年間フィリップス・コレクションに勤められている方が今回来日して展示に立ち会われました。

展示作業が進めてられていきましたが、そのレジストラーのチーフの方から『ダンカン・フィリップスはそんな展示はしない』と繰り返し言われ、展示順序も一転二転して大変でした。カテゴリや年代順、国別等をは却下され、最終的には購入年順で落ち着きました」(安井さん)

『もっとenjoyしていいよ』と言われ日本側の方々は困惑したそうです。

展示風景より 右からルソー、ボナール、クレー、ボナールという順で並んでいる

「3部屋目、ルソー、ボナール、ボナール、クレー、ゴッホという順で並べられていたのが入れ替えられました。ルソー、ボナール、クレー、ボナールという順に変更されたのですが、それが良い方向になりました。そして、ここから先の展示でも自分のプランとはかけ離れた冒険した展示となりました。ド・スタールの横にムーアそしてゴッホ、モディリアーニという順で、それがいいと言われて困惑しました」(安井さん)

展示風景より 『道路工夫』,フィンセント・ファン・ゴッホ,1889年(1949収蔵)

「ダンカン・フィリップス流はその場にあって、コンテクストを見つけながらENJOYするということがわかりました。例えば、ゴヤの隣にピカソがあります。スペイン繋がりかと思いつつ、フィリップス・コレクションの方々は『どちらの絵も2つの三角構成の中に片側は動きとしての動感があり、もう片側は情感としての動感がある』と感覚的に読み解いていました」(安井さん)

展示風景より 『稽古する踊り子』,エドガー・ドガ,1880年代はじめ-1900年頃(1944年収蔵)

「また、年代によって購買の傾向が変わるところも今回の展示では感じられます。フィリップス・コレクションはボナールを多く所有していますが、ボナールの『棕櫚の木』や『開かれた窓』の後だとドガのオレンジ色の背景の踊り子に流れが続いているのがわかります。」(安井さん)

展示風景より 左:『白い縁のある絵のための下絵Ⅰ』,ワシリー・カディンスキー,1913年(1953年収蔵) 右:『森の中の鹿Ⅰ』,フランツ・マルク,1913年(1953年収蔵)
展示風景より 左:『踊りの稽古場にて』,エドガー・ドガ、1870-72年(2006年収蔵) 右:『女のトルソ、身体をねじって跪く裸婦』,オーギュスト・ロダン、制作年不詳/1984年鋳造(2009年収蔵)

また、安井さんが注目したのは『開かれた窓』の猫にも注目します。
「ボナールは目を落ち着かせることのない画家です。複雑な絵画的なでっこみ、ひっこみを描いています。その中で、『開かれた窓』の猫はハイタッチしているような様子をしています。ボナールは目の前の景色をそのまま描くわけではありません。おそらくボナールが餌付けしたであろう猫の、一瞬を捉えています」(安井さん)

展示風景より 『開かれた窓』,ピエール・ボナール,1921年(1930年収蔵) 右下の黒猫にも注目!

「アメリカ人のモダニズムであるポスト印象派を育てていくような買い方をしている。そんなことを感じながらも鑑賞できる内容になっています」(安井さん)

ドールハウスにポストカード こだわりの展示会グッズにも注目

今回のイベントでは、ミュージアムショップのStore1894運営 株式会社East代表の、開(ひらき)さんからグッズについてもご紹介がありました。

今回の展示会グッズはとにかく絵に拘られたそうで、ポストカードも展示作品75作品中64枚を販売、ミニチュアキャンバスはStore1894定番で裏面にはフックがついていて壁掛けも簡単!そして、店内中央のドールハウスはダンカン・フィリップスの自宅でフィリップス・コレクションの美術館になったメインギャラリーを模しており、そこに掛けられた絵は、絵画の複製画で1/12のミニチュアサイズで、額も再現されています。

ミュージアム・ショップのドールハウス フィリップス・コレクションのメイン・ギャラリーを模している
パネルはフィリップス・コレクションのメインギャラリーの写真 ドールハウスの精巧さがよくわかる

あえて白黒で製作されたドールハウスの中で名画が際立って素敵です。

また、無料で頂けるお土産も。
館内にて配布中の「エンジョイ・ユアセルフ・カード」では表面が絵画、裏面には鑑賞ポイントが書かれており、切り離し可能です。
カードは2種類あり、緑色が奇数日、赤色が偶数日に配付されています。

さらに特設サイトの「GALLERY 作品紹介」ページでは、全作品の解説が読めます。展覧会前の予習に、見終わった後の振り返りにと太っ腹な内容です。

 

展示概要

フィリップス・コレクション展
会期:2018年10月17日(水)~2019年2月11日(月・祝)
場所:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日:月曜日(祝日・振替休日の場合、会期最終週とトークフリーデーの10月29日、11月26日、1月28日は開館)、2018年12月31日(月)、2019年1月1日(火)
観覧料:一般1,700円(1,500円)/高校・大学生1,000円/小・中学生500円
※()内は前売料金、一般のみ。
※障がい者手帳持参者と付添1名まで半額。
※アフター5女子割は第2水曜日の17:00以降。当日券一般(女性のみ)1,000円。他の割引との併用不可、利用時に「女子割」での当日券購入の旨申し出が必要。

※本ブログはイベントのため特別な許可をいただいて写真を撮影・掲載しています。

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